本 その6 相づち

次第に秋の気配が忍び寄っているようです。朝夕は肌寒く、ホタルもいつの間にか出てこなくなりました。あのぎらぎらしたような葉っぱの緑も、穏かなミドリになってきました。もうすぐ落ち葉の季節。
「ひどいんだよ・・・きょう忘れ物して立たされちゃった。」
「また!?今度は何を忘れたの?だめじゃない、いつもいつも忘れ物ばっかりして。」
「国語のノート、・・・でも、きのうちゃんと見たんだけど・・・。」
「ちゃんと見たんだったら、忘れるわけないでしょ。いつも寝る前に確かめなさいって言ってるでしょ!ゲームばっかりして人の言うこと聞いてないんだから。」
「・・・うん。」(心の声:でも、立たせることはないと思うんだけど・・・)
「先生だってあなたを立たせたくて立たせているわけじゃないのよ。あなたが忘れ物ばっかりするから・・・。悪いのは自分なんだから仕方がないでしょ。あしたから絶対に忘れ物をしないようにしなさい!わかったわね!」
「・・・。」
親としては子供の忘れ物癖を何とかしたい一心なのでしょうが、それにしても、批判とああせいこうせいと攻め立てられるばかりで、子供が自分で問題点を考える隙はないし、責任を感じる余裕もないように見えます。「駄目な人間だ」ということを一方的に言いまくられ、「ああ、僕はダメなんだ。」と思い込むことしか起こりえないパターンかな。
「ひどいんだよ、・・・きょう忘れ物して立たされちゃった。」
「へ~。」
「きのう寝る前にちゃんと見たんだけど・・・、国語のノート忘れたんだ。」
「そう。」
「今週で3回目だから・・・先生も頭にきたかな・・・。」
「そうね~。」
「・・・。」
「・・・。」
「ねえ、こんどからゲームやる前にさ、ランドセルに入れるから、かあさんもう一度チェックしてくれる?」
「いいわよ。時間割もいっしょに置いといてね。」
子供は引け目を感じつつ、何とか言い訳を考えているわけです。つまり子供なりに強い「苦悩」を抱えて必死に切り抜けようとしているのでしょう。そういう時は、批判や忠告をいっさい交えることなく、ただうなずいたり、相づちをうつだけで、問題点や解決法に目を向ける余裕が子供に生じることもあるように思います。

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